2022-10-20

必須アミノ酸の宝庫!下北の郷土料理「ミソカヤギ」

坂本 謙二(むつサテライトキャンパス 食育健康講座コーディネーター)(むつ国際交流協会 会長) むつ市在住プロフィール

三方を海に囲まれ、豊富な海の幸に恵まれた下北半島。観光・ビジネスにかかわらず、美味しいお刺身を目当てにしている方も多いと思いますが、郷土料理でいろんな魚介を楽しめるのが「味噌貝焼き」です。 津軽地域では、貝焼き味噌 または 卵味噌 と呼ばれているようですが、下北では、昔から「ミソカヤギ(またはミソカヤキ)」と呼ばれています。これが、単に美味しいだけではないのです…!

■家庭で味わう。味噌貝焼きの歴史

わたしが幼かった頃、昭和20年代後半から30年代は、だし汁にまだ粒の残っている味噌を溶き入れ、薄切りのネギを入れただけで、それを熱いご飯に乗せて食べるという質素なものでした。風邪を引いたときや産後の肥立ちが悪いときに、豆腐や卵で滋養強壮を考慮するようになったのは、生活に多少のゆとりが出てきた昭和40年近くになってからのことです。

かつて下北では、味噌貝焼きの鍋として、どこの家庭でも年季の入ったホタテの貝殻を家族の人数分だけそろえておりました。現在のように養殖が盛んでなかった頃でしたので、天然のぶ厚い貝殻で直径が20cm前後の7~10年物と思われる大きいものでした。長年使いこんだ貝殻には、だしがしみ込んで、ただお湯を張って加熱しただけで味が出てきたものでした。今でも売られていますが、大きさや厚さは昔のものには比べものになりません。

今年購入したホタテの貝殻(直径約16cm)。これでも昔に比べると小ぶりになりました。 写真/下北地域連携部

■変幻自在。味噌貝焼きの具材

味噌貝焼きの具材に厳密な決まりはありません。
定番の具材としては、豆腐、ネギの斜め薄切り、シイタケ・エノキ等のキノコ類、白菜のそぎ切りなどが挙げられますが、その他の海藻・魚介は、季節感や色彩を出すものとして、自由に選んでいただいて構いません。下北らしさがあるのは、海藻ならワカメ、マツモ、アオサ、フノリ、イワノリなど。魚介であれば、ホタテやアブラツノザメ、カレイの焼いたもの。豪華にウニを入れても美味しくできます。

適当な大きさに切り、焼き目をつけたアブラツノザメ(写真右下)を入れて下北らしさを。

そして、だしには下北の名産イワシの焼き干しを使ったものをぜひ使ってみてください。ちなみに、料理研究家のコウケンテツさんの番組で、川内漁協のナマコの卵巣をいれた、酒飲みには垂涎の的となる超希少価値のある味噌貝焼きが紹介されたことがあります。

イワシの焼き干しは、頭・内臓が取り除かれてあり雑味が出ません。

■美味しいプラスα。味噌貝焼きの栄養学

ヒトが食物から摂取しなければならない必須アミノ酸は大人で8種類ですが、米と味噌(大豆)を一緒に摂取することで、必須アミノ酸の不足を補い合うことができます。味噌貝焼きが以前は滋養強壮のために食べられていたと前述しましたが、まさにその通り。化学的知識のまだなかった頃に、理想的な必須アミノ酸のとり方を生み出した先人の知恵に驚かされますが、ご飯に味噌貝焼きの組み合わせは、必須アミノ酸のすべてが摂取できる理想的なタンパク質のとりかたです。高齢者のフレイル予防にはもちろんのこと、アスリートの皆さんにもおすすめです。味噌貝焼きで短命県返上を!
ただし、減塩のため、くれぐれも味噌少な目、だし濃厚にしてください。

■お店でも美味しい。味噌貝焼き

むつ商工会議所では、「みそ貝焼きガイド」を作成し、むつ市内で食べられるお店を紹介しています。その数、およそ30店。地域でこれほど広く愛されていることに驚きます。
お店ごとに具材や味付けが異なっていますので、下北においでの際にはぜひ味わってみて下さい。単品でもオーダーできますし、定食にしても1,000円前後で食べられます。

― 補足情報 ―
■むつ商工会議所
・みそ貝焼きガイド 
https://www.mutsucci.or.jp/service/misokayaki/

\ この記事の著者 /

坂本 謙二(さかもと・けんじ)

むつサテライトキャンパス 食育健康講座コーディネーター
むつ国際交流協会 会長

むつ市在住

むつ市大湊生まれ。
弘前大学教育学部化学研究室卒業後、県立高校の理科教員として教壇に立つ傍ら、東奥日報朝刊で弁当記事の連載や、料理教室のセミナー講師などの食育活動を行う。また、むつ市の姉妹都市締結に尽力し、現在はむつ国際交流協会会長を務めるなど、幅広い分野から地域社会に貢献している。定年退職後の現在も、講演会や料理教室などを通して食の大切さを伝えている。

■著書
『坂本先生の化学的お弁当』H24.5協同印刷工業株式会社から出版
『坂本先生の健康的青森食』H26.2協同印刷工業株式会社から出版

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佐藤 史隆 季刊あおもりのき発行人

下北半島はむつ湾、津軽海峡、太平洋に面したそれぞれの地域で、また山地、平地で手に入る食材が異なり、まさに食材の宝庫といえます。
また、厳しい自然条件を背景に、イモ料理や餅料理、魚介料理など、下北独特の郷土料理が生み出されてきました。

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