2023-1-20

下風呂のおいしく素敵な支えあい

坂本 愛 (有限会社 畠山商店 代表取締役) 風間浦村在住プロフィール

みなさま、はじめまして。
わたしは風間浦村の下風呂で生まれ育ち、家業の箱屋を継いで木箱を製造しています。
青森県で木箱というとリンゴを入れる箱を思い浮かべる方もいるかもしれませんが、下風呂で木箱といえば魚を入れる木箱です。
この木箱、下北の杉で作っていて、下風呂の漁師にご愛用いただいています。
わたしたち箱屋はお客さまである漁師あっての商売ですが、今日はそんな下風呂のおいしい支えあいについて、ご紹介します。

ここ津軽海峡、下風呂沖には大昔、海底火山噴火で出来た、急激に深くなる漁場があります。
その漁場は魚の絶好の生息地で、しかも陸(おか)からすごく近いため、生きたままの鮟鱇(あんこう)が水揚げされます。

生きたまま水揚げされるのは日本中でも風間浦だけ!
その新鮮さゆえ、鮟鱇のお刺身が食べられるなんてすごく贅沢。
そんな贅沢な経験をさせてくれるなんて、漁師さん本当にありがとう!

水揚げされた鮟鱇は、荷捌き所で漁協の職員さんが鮟鱇の口に手を突っ込みます。
鮟鱇のお口はでっかいうえに、海の底にいたり海面に浮上したりするので、お腹の中の異物を取り出す必要があるのですが、なんとゴンベ(カモメやウミネコのこと)が出てきたり、ビール瓶が出てきたり。

その中でもブランド基準を満たした鮟鱇が、風間浦鮟鱇として木箱に入れられ出荷されています。

ここで謎!
なぜ鮟鱇はお腹を上にして出荷されるのか?

お腹を上に向けて木箱に入れられる鮟鱇

そして、下風呂漁港はスルメイカの漁場も近いことから、地元船以外にも北海道や隣町などの船が集結するので、港内には沢山の漁船が並びます。

そんな漁師さんが集まる時には、温泉も食堂も港も下風呂全体が活気付くんです。

鮟鱇もイカも魚も漁があるとみんな活気付く。それが下風呂。

自然の海が相手だから、毎日活気があるわけではないけれど、命懸けで沖に出る漁師さん。沖から戻って冷えた体を温泉で癒します。

誰かの日常は誰かの非日常。
漁師さんの日常により、わたしたちはおいしい海の恵みをいただくという非日常を過ごしています。
そんなところにも思いをはせて、下風呂の食と湯を楽しむのもおすすめです。

ちなみに、夏から秋にかけて旬を迎えるスルメイカ漁。
実は1月初旬まで漁は続いているので、お正月にイカと鮟鱇が同時に食べられる奇跡があるかもしれません。

イカ漁が盛んな時期の下風呂漁港

さいごに、令和3年の大雨災害でこの地区が孤立したとき、漁船を出して物資を輸送してくれたのも、一昨年当社で火災が発生した時に駆けつけて消火してくれたのも、消防団の漁師さんでした。

わたしと漁師さんは海の幸を通して、おいしく素敵な関係で支えあって生活していると思います。漁師さんいつもありがとう。

みなさまもそんなおいしい関係になってみませんか。


そうそう、そういえば謎の答えをお伝えしていませんでしたね。

漁師さんに教えてもらったところ、「鮟鱇は内臓から傷んでくるため、お腹を冷やすことが大事。そのため、お腹を上に向けて木箱に入れることで、あとから氷を入れてお腹が冷えるようにしている」とのことでした。

そんな鮟鱇、今が旬です。ぜひ、風間浦村へお越しください!

\ この記事の著者 /

坂本 愛(さかもと・あい)

有限会社 畠山商店 代表取締役

風間浦村在住

風間浦村生まれ。
都会からUターンして家業の箱屋を継ぎ、木箱、魚箱、リンゴ箱等の販売を行うほか、津軽海峡マグロ女子会(マグ女)としても活動する。

■畠山商店
・ホームページhttps://hatakeyama.shop-pro.jp/
■津軽海峡マグロ女子会
・ホームページhttps://magujyo.link/
・Facebookhttps://m.facebook.com/magujyo

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