2023-2-25

~うにぎり~それはウニと優しさを包んだ贅沢な一品

小田切 孝太郞 rakraライター 平川市在住プロフィール

 佐井村では「うにぎり」なる逸品が提供されているらしい。下北半島はウニの名産地として知られているが、そのウニを使用した贅沢なおにぎりということで、聞いただけで心が躍り、味を想像しただけで口の中が幸せになってしまうほどの絶巧のネーミングだ。

うにぎりの提供は4月から岩のりの在庫が無くなるまで。例年は9月頃で終了しているとのこと。

自宅から佐井村までは少し距離はあるが、狙ったグルメのためなら何のその。産地を訪ねて、食材を育んでくれた風土を感じながら味わうのが私の流儀なのだ。
 ハンドルを握り続けて数時間、佐井村に到着。道すがら、休憩した道の駅に並ぶ数々の下北名物の誘惑に打ち勝ち、空腹をキープした良いコンディションである。お目当ての「うにぎり」は津軽海峡文化館アルサスに隣接する「ちょこっと」で提供されている。

「ちょこっと」は軽食や海鮮丼など、佐井村にちなんだ味を気軽に楽しめるスポットだ。

 入り口の扉を開けきらないうちに「うにぎりひとつ!」と注文。期待度MAXの一品。作る過程を見逃すまいと、厨房に立つ母さんの手元を見ていて驚いた。銀の匙の上で金色に輝く山盛りの塩ウニ。こんもりとすくい上げては、白米の上にウニをマシマシ。

岩のりは焼いたあとに醤油で味付け。少ししょっぱ目なのが、漁師町の味付けだ。

もはや店名のちょこっとどころではない盛りようなのだ。だからといって佐井村産のウニが安いわけではなく、青森市や東京で食べると中々のいいお値段がして、当然のごとくおいしい。この辺で獲れるウニはキタムラサキウニという種類で、佐井のウニは激しい海流に揉まれた栄養満点の海藻類をエサに育つため、中身もぎっしりで味のりが良いという。
 磯の香ばしさを漂わせながら、いよいよ目の前に登場したうにぎり。このために朝食を抜き道中の誘惑も断ってきた。なんならウニについて少し勉強もした。色々な感情を胸にしてがぶり。

具材となる「津軽海峡甘塩ウニ」は佐井村内の産直や土産店で購入できる。

うまい…。我慢したかいがあって言葉を一瞬失うほどうまい。もちろん一口目からウニにヒット。絶妙な塩加減と旨味が口の中でとろける。
 メインのウニに負けないほど、存在感を放つのが岩のりだ。少し粗めで繊維が感じられる食感と、海の豊かさが香る岩のりは漁師さん自家製の逸品。母さん曰く、包丁で細かく叩いて薪ストーブの上で海苔を干すのが、以前は村の各家庭で見られた光景だという。昔の日常と同じような製法で仕込まれた岩のりは、ノスタルジーまで感じさせてくれるのだ。

岩のりが獲れるのは12〜2月ごろ。冷たい海で頑張る漁師さんには本当に頭が下がる。

使用する米も、つがるロマンを主体におにぎり用にブレンドしたというこだわりよう。あまり強く握らないのが肝で、ご飯が口の中でほどけるよう柔らかく包むのが母さん流。
 溢れるウニ、昔ながらの岩のり、ふんわりと広がるご飯、そして全てをひとつに包み込む母さんの優しさ。どれもがうにぎりを形成する大切な要素。そして500円というコスパもうにぎりの魅力。ワンコインで贅沢な感動を伝えてくれる佐井村の味をぜひ堪能してほしい。

口に入れた瞬間に優しくほどけるうにぎり。目の前の海を眺めながら食べるとうまさ倍増。

― 補足情報 ―
■ちょこっと
下北郡佐井村佐井大佐井112佐井アルサス前
TEL/0175-38-4513
営業時間/4〜10月 10:00〜16:00(11〜3月 11:00〜15:00)
定休日/無休(11〜3月 土日祝)
うにぎり 500円

\ この記事の著者 /

小田切 孝太郞

rakraライター

平川市在住

青森県平川市生まれ。地元出版社で編集者として働く傍ら、業務の一部としてrakraの記事を書き始め、令和3年からフリーに。rakraライター歴は約10年になるが、普通の記事はあまり書かせてもらえず、本誌企画の「乗りノリで行こう!」ではコスプレをさせられ、特集ページでは春の冷たい十和田湖に入れられたりと、身体をはった体験記が多い。趣味は日本を縦断するスーパーロングドライブ。