2021-9-30

見るだけじゃない、横浜町の菜の花!

佐藤 史隆 季刊あおもりのき発行人プロフィール

ドーナツやはちみつなど横浜町の魅力を伝える“菜の花”商品
 撮影協力/道の駅よこはま

<今回の深掘りキーワード>
「菜の花」

「♪菜の花畠に入日薄れ 見渡す山の端霞深し 春風そよ吹く空を見れば・・・」
童謡にも歌われる菜の花畑の風景。日本に住む私たちには、どこか懐かしさを感じさせるものではないでしょうか。
そして、菜の花の黄色は、見る人に元気や幸福感を与えてくれます。青森県では、横浜町の菜の花がよく知られています。

■「菜の花」「菜花(なばな)」「ナタネ」「アブラナ」の違いは?

「菜の花」というと、黄色い可憐な花を思い浮かべますが、スーパーなどに行くと同じ名前で野菜やお惣菜として売られているものもあります。それでは菜の花とは一体何なのでしょうか?
正確な言い方をすると、菜の花とは、アブラナ科アブラナ属の植物の総称(呼び名)です。その中で、野菜として食べる品種を「菜花」、菜種油を搾油するための品種を「ナタネ」と呼びます。
菜花には、ブロッコリー、カリフラワー、キャベツ、白菜、ケール、カラシナ、カブなどおなじみの野菜が含まれます。これらがスーパーで菜の花として売られることがあります。
一方で搾油用の「ナタネ」は、現在ではセイヨウアブラナを指すのが一般的です。かつては、明治時代以前からの在来ナタネで「アブラナ」がありましたが、含油率の高いセイヨウアブラナが日本に入ってきたことで、搾油用としては使われなくなっていきました。
横浜町の菜の花畑には、青森県の奨励品種キザキノナタネというセイヨウアブラナが植えられています。

菜の花トラストの菜の花畑(2021年5月初旬)
写真提供/NPO法人菜の花トラスト

横浜町では、戦前からジャガイモとの輪作用作物として、ナタネが栽培されるようになりました。ナタネは毎年9月に種をまき、冬を越して5月に花が咲き、7月に刈り取ります。ナタネには冬の間放っておいても育つ特性があります。半農半漁で暮らす町民にとって、冬場はナマコ漁などで忙しいため、大変便利な作物です。ジャガイモと交互に植えることで連作障害を防ぐことができ、また経済面でも換金作物として重宝されてきました。
ナタネ栽培が定着する中で、5月の菜の花畑の風景は町民の心に浸透してきます。地元では菜の花を使った町おこしが進められ、「菜の花フェスティバル」のようなイベントが開催されているほかにも、魅力的な菜の花商品が生み出されています。

■ぜひ買いたい!横浜で出会える菜の花商品

横浜町では、第4回エッセイの杉山徹さんが店長を務める「トラベルプラザ・サンシャイン」や道の駅よこはまで菜の花商品を購入できます。

サンシャイン店内には、菜の花やナマコ、ホタテなどを素材にした、横浜町や下北半島の魅力を伝える商品が多数並びます。中でも筆者のおすすめは、エッセイでも紹介の「菜の花せんべい 菜の物語(なのはなし)」です。杉山徹さん自ら開発に関わったという熱意たっぷりのおせんべい。南部せんべいを菜種油で揚げ、遠心分離機で表面の油を飛ばすことでカリッとした触感と香ばしさを引き出しています。ビールのお供にもぴったりです。 (10枚入378円)
ほかにも、「なの花ハチミツサイダー」(1本330ml 300円) 、「菜の花焼酎 なの恋」(1本720ml 1,512円) 、「菜の花シュークリーム」(1個150円) 、「菜の花マヨネーズ」(1個70g 540円)などがあります。
また、晴れた日の夕刻、サンシャインから見る陸奥湾の夕日は美しく、ぜひ生で見ることをおすすめしたい風景です。さらに、サンシャインでは今年5月、店舗裏手の陸奥湾を望むスペースに、ソロキャンプをメインとした「621(むつわん)野営場」を開設しており、宿泊すれば夕日に加えて、むつ市街を望む夜景も楽しむことができます。利用料もお安く、こちらもおすすめです。

「トラベルプラザ・サンシャイン」の菜の花商品コーナー
写真/青森県下北地域県民局

道の駅よこはまの物産館に入って真っ先に目につくのは、JA横浜町女性部が作る一番搾り菜種油で揚げた「菜の花ドーナツ」。根強い人気です。菜花を練り込んでいて、断面がうすい緑色。物産館内にあるJA横浜町女性部の工房で作っていて、工房窓口では1個単位で購入可能です。できたてを味わえるのがうれしいです。ここでは、「菜花ソフト」も販売しています。菜花の若芽と菜の花はちみつを練り込んでいて、うっすらときれいな緑色をしています。
(菜の花ドーナツ 1個80円、5個入350円/菜花ソフト340円)

道の駅よこはまの「菜花ソフト」
 写真/青森県下北地域県民局

また、物産館にはずらりとはちみつが並ぶ一角があります。ここにあるのは、地元の澤谷養蜂園の商品です。1946年創業の澤谷養蜂園。「完熟自家採取国産蜂蜜」のみを販売しています。中でも、「菜の花生はちみつ」は、口に含んだ瞬間に新鮮さを実感します。コクがあり、やわらかい甘みが余韻を残します。また、巣箱から採取した状態のまま商品化している「しぼりたて生はちみつ」シリーズ(季節限定)もおすすめです!「ひとくち菜の花生はちみつ」や「はちみつ生キャラメル」も食べやすくてうれしい商品です。
(菜の花はちみつ230g 1,300円など/菜の花生はちみつ140g 980円など/はちみつ生キャラメルボックス1箱680円/ひとくち菜の花生はちみつ1袋880円)
澤谷養蜂園については、本サイトの特集「下北人」でも紹介しているので、ぜひご覧ください。(記事はこちら)

■一流も認める菜の花トラストの「御なたね油」

「Highest Grade御なたね油」(180g 2,484円)と
「御なたね油」(ミニ 90g 864円)

物産館の菜の花商品の中で、筆者の一押しはNPO法人菜の花トラストの「御なたね油」です。原料となるナタネを無農薬、無化学肥料で育て、天日干し(非焙煎)、圧搾一番しぼり、自然ろ過、添加物無使用で製造。ひたすら素材を活かし、時間をかけて仕上げています。そうしてできたのがエキストラバージン“なたね”オイル。生食可能な特別な菜種油です。黄色い液体は濃厚でありつつ、味わってみると、ほんのり甘みがあり、さわやかで後味良し。オリーブオイルとはまた違ったテイストです。生のままの油をパンにつけて食べるのもおいしく、いろいろな食べ方をしたくなる魅力があります。東京の一流レストランからの注文が来るなど、高く評価されています。
菜の花トラストでは今年、さらなる質の高みを目指し、コールドプレス(45℃以下)で搾油した「Highest Grade御なたね油」を発売しました。これは2022年に菜の花トラストが発足20年を迎えることから、記念商品として開発したもので、従来よりもさらなる透明度、さらっとした口当たりを実現しています。

このように、「横浜町は菜の花の町」という話題性はあるものの、生産農家の経済的な後押しには必ずしも結びついていないという現実があります。実際、最盛期の1968年には約750haもあった畑は、人口減少などによる担い手不足からどんどん減少していきます。荒れた農地が増える中、「このままではいけない」と立ち上がったのが菜の花トラストです。菜の花トラストは、2002年3月、横浜町の有志7名の呼びかけでスタートしました。「休耕地に菜の花を咲かせること」、「収穫した菜種による菜種油のファンを増やすこと」を活動の両輪として、広く支援を呼びかけています。
現在、理事長を務める宮茂さんは、「20年、活動資金の面においても苦しいことの連続でしたが、一生懸命やってきました。いろいろな場面で必ず助けてくれる人がいて、私たちは人に恵まれていたと思います」と感謝します。

道の駅よこはまにて宮茂理事長。御なたね油や化粧品など菜の花トラストの商品コーナーにて

■最後に

5月の菜の花畑の風景は、なつかしさを感じたり、元気をもらったり、やすらぎをおぼえたり、見る人それぞれに心に受けるものがあると思います。横浜町には、菜の花を通じて地域のために活動をしている人たちがいます。そこには、菜の花畑というかけがえのない風景を守りたいという思いがあります。
横浜町を訪れたら、ふるさとへの思いがたっぷりと詰まった菜の花商品を買って応援しよう!そう思った筆者でした。

― 補足情報 ―
■トラベルプラザ・サンシャイン
http://www.tpsun.jp/
※「621(むつわん)野営場」については、代表の杉山氏(電話090-3122-3760)に問い合わせ
■道の駅よこはま「菜の花プラザ」
https://www.nanohana-plaza.com/
■NPO法人 菜の花トラスト
http://nanohana-trust.com/

(注)文中の商品価格は2021年9月現在のものです。

\ この記事の著者 /

佐藤 史隆

季刊あおもりのき発行人

1972年青森市生まれ。青森高校、東海大学文学部卒業。帰郷後、地域誌「あおもり草子」編集部へ。2019年冬「ものの芽舎」創業。2020年12月あおもり草子後継誌として「季刊あおもりのき」を創刊。NPO法人三内丸山縄文発信の会(遠藤勝裕理事長)の事務局としても活動。2022年4月には、青森県の馬に関する歴史・民俗・産業などのあらゆる事象を研究するあおもり馬事文化研究会(笹谷玄会長)を立ち上げた。ちなみに佐藤家のお墓はむつ市川内にあり、毎年家族で墓参りをしている。

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