2022-2-28

"下北のヒミツ"を巡る下北半島堪能の旅

佐藤 史隆 季刊あおもりのき発行人プロフィール

5月から開山する恐山

<今回の深掘りキーワード>
「首都圏発 下北半島一人旅」

今月の自慢記事は、JAL「ふるさと応援隊」のご協力をいただきました。そこで今回の深掘りは、「私が東京在住の悩める会社員(40代男性)で、週末に三沢空港に降り立ち、下北半島を存分に堪能する“欲張り”な一人旅をするならば……」
そんな仮定のもと、これまでのおさらいを兼ねて旅日記風にご紹介します。しばしのバーチャルツアー、ご笑覧ください。

企業戦士を自負していた自分だが、最近は営業成績も今ひとつ。どうも仕事に気持ちが入っていない。リフレッシュが必要だ……。ならばと、初夏のある日、私は久々の旅に出ようと決心した。
未知の世界を訪ねたい。海を見たい、森に包まれたい、風を浴びたい、絶景に出会いたい、おいしいものを食べたい。1泊2日でこれだけの願望を満たしてくれる旅先はあるのだろうか……?
そういえばこの間、「下北のヒミツ」で見た恐山や宇曾利山湖の風景が、なぜか心に残って離れない。よし、行き先は青森県下北半島だ。
(※)文中のフライト時刻は、執筆時点で令和4年5月分として公表されているものに基づいています。

【1日目】

JAL 7:50東京発 → 9:05 三沢空港着/9:30出発
週末の朝。羽田空港からJALに乗り、三沢空港まで1時間と少し。東京と青森は意外と近いのだなと感心しながら、三沢空港近くでレンタカーを借り、下北へ出発した。

<運転1時間10分>
10:40 横浜町・道の駅よこはま菜の花プラザ着/11:00出発

道の駅よこはま

太平洋岸の国道から、むつ湾沿いの国道へ。はまなすラインを北上し、途中、「道の駅よこはま菜の花プラザ」で一休みする。菜の花プラザにはその名の通り、なたね油や、化粧水、はちみつ、ドレッシングなど、多くの菜の花商品が売られている (深堀り♯04)。
ここの一番人気は、生地に菜花を練り込んだ菜の花ドーナツだそうだ。特に、揚げたては「ほっぺたが落ちそうになる」とか。今はお昼前だが、せっかく来たのだし、1個だけならいいだろう。
ちなみに、5月上旬から中旬の横浜町では、日本有数の規模の菜の花が見ごろだそうだ。

<運転40分>
11:40 むつ市大湊・「美味小屋 蛮」着/12:40出発

蛮の人気メニュー「アランドロンカレー」

横浜町を出て、仏ヶ浦へと進路をとる。途中、「アランドロンカレー」なるメニューがあるという、むつ市大湊の「美味小屋 蛮」で早めの昼食をとる。出てきたカレーを見ると、ルーの真ん中に、小島のように盛られたご飯と、げんこつのようなハンバーグが。これだけでもインパクト大だが、ハンバーグにナイフを入れると「あらん♡ドロ~ン」とチーズがあふれ出す。なるほど、だから「アランドロンカレー」なのか。うまい。

<運転20分>
13:00 むつ市川内・サンマモルワイナリー着/13:20出発


腹を満たし、再び車を走らせる。むつ市川内地区に入って、道沿いにあるサンマモルワイナリーに立ち寄る。せっかくだから下北ワインを買いたい。本州最北のブドウ畑のピノ・ノワールをぜひ堪能したい。ぶどうソフトも旨そうだ。

<運転50分>
14:10 佐井村・仏ヶ浦到着 / 16:10出発

仏ヶ浦  写真/下北地域県民局

かもしかラインから海峡ラインへ、ワイナリーから車を走らせること約50分、仏ヶ浦に到着した(ヒミツ♯03)。仏ヶ浦見学は観光船も楽しいそうだが、今回は歩いて回ることにした。自然の芸術とは、こういうものをいうのだろう。新第三紀(2,303万~258万年前)から形づくられてきた岩々には、畏敬の念さえ覚える。海風を浴びながら、眺めて、感じる。そして写真を撮らずはいられない。気がつけば2時間が経過していた。

<運転60分>
17:10 大間町・大間崎着/18:00出発


途中、佐井村の津軽海峡文化館アルサスを通過。フードコーナーでは、ウニと岩ノリの風味が最高の「うにぎり」(ヒミツ♯01)を、向かいの「なな・いち・まる」では、佐井村産のホップを使ったクラフトビールを購入できる。アルサスは、仏ヶ浦行き定期観光船の発着地でもある(ヒミツ♯03)。

アルサスからさらに車で30分。本州最北の地、大間崎に到着した。
本州最北端への到達を記念し、「まぐろ一本釣りのまち」のモニュメントを写真におさめる。大間埼灯台(ヒミツ♯02)越しに見える北海道は、まさに指呼の間、思った以上に近い。津軽海峡を「しょっぱい川」とはよく言ったもので、潮の流れも川のように左から右(西から東)へと流れて見える(深堀り♯01)。

<運転30分>
18:30 風間浦村・下風呂温泉まるほん旅館に到着

宿泊する下風呂温泉郷のまるほん旅館に到着(ヒミツ♯08)。温もりを感じる温泉宿。優しそうなおかみさんが出迎えてくれた。
部屋に着いて荷物を整え、まずは風呂だ。濃い硫黄泉が、疲れた体に染み渡る。19:30夕食。この時期のおすすめは「うにプラン」。とれたてのキタムラサキウニをはじめとして、さまざまな海の幸を堪能できる。食事の後は部屋でゆっくり過ごす。たまには読書をと、井上靖の小説『海峡』を手にするが、心地よい疲れから、すぐに意識が遠のく・・・

【2日目】

6:00 起床。身支度して、周辺を散策。大間鉄道の跡を見る
8:00 まるほん旅館出発


温泉の効果か目覚めは清々しく、辺りを散策する。「鉄道アーチ橋メモリアルロード 足湯」と書かれた看板があった(深掘り♯08)ので、案内に従って歩いていくと、なるほど、足湯がある。足を浸しながら、津軽海峡を眺める。
さあ、今日も楽しもう。宿に戻って朝食をとり、まずは奥薬研へ向かう。

<運転30分>
8:30 むつ市大畑・奥薬研修景公園レストハウスに到着/10:00出発

新緑の薬研渓流 写真/下北地域県民局

レストハウスを拠点に奥薬研の遊歩道を歩く。下北のヒミツ(♯06)には秋の紅葉の美しさと、冬の見どころが書かれていたが、新緑の時期の散策も気持ちがいい。渓流沿いを歩きながら、気の向くままにシャッターを押す。
9:30頃、レストハウスに戻って一息入れる。徒歩3分ほどのところに、「元祖かっぱの湯」がある。無料とは太っ腹だが、男性・女性の入れ替え制で今はちょうど女性の入浴時間らしい。残念だが、代わりにレストハウスの足湯を利用する。早くも本日2回目の足湯だ。

<運転30分>
10:30むつ市・恐山霊場着/12:00出発

霊場恐山

いよいよ今回の旅の目的地、霊場恐山に到着。駐車場からも宇曽利山湖(ヒミツ♯07)が見える。
ここは死者の魂が集まるといわれている場所だ。随所に立てられた風車(カザグルマ)を目にすると、その背景にある思いが察せられ、自然と涙がこぼれる。極楽浜から再び湖を眺め、自分も含めた人間の生きざまに思いを馳せた。ここでは、時間はゆっくりと流れている。
境内には硫黄泉の温泉もあった。本来参詣前に体を清めるために入浴する場所だというが、帰りに汗を流す人の姿もある。
涙のせいか、心が軽くなったようだ。次の目的地へと向かう。

<運転20分>
12:20頃 お食事処 なか川着 /13:10出発

なか川の「みそ貝焼き」 写真/下北地域県民局

朝からよく歩いたので、すっかり空腹だ。むつ市内の「お食事処 なか川」で昼食をとる。ホタテ定食も捨てがたいが、やはりここは、みそ貝焼き定食だろう。ホタテの貝殻を器に、ホタテの身、エビ、豆腐など具材も豊富だ。具材の上に載っている卵をとき、ぐつぐつと煮えていく様をじっと見つめる。
いや、待て。この料理は「貝焼きみそ」と呼ぶのではなかったか……
そう思ったところで、タイミングよく隣のテーブルの二人連れが、「みそ貝焼き」か「貝焼きみそ」かで論争を始めた。ご夫婦で、奥さんが津軽の人らしい。結論としては、下北では「みそ貝焼き」、津軽では「貝焼きみそ」と呼ぶそうだ。

<運転40分>
13:50 尻屋埼灯台着/15:00尻屋埼灯台出発

尻屋埼灯台と寒立馬

次は東通村へ。東通村には、東通村歴史民俗資料館(深堀り♯05)やヒバ埋没林もあるが、今回は尻屋埼灯台(ヒミツ♯02)へと向かう。
太平洋と津軽海峡のはざまに凛と立つ、白亜の灯台を写真におさめる。明治初期に造られたレンガ造りとして日本一高い灯台(32.82メートル)は、140年以上この場所に立ち、人々を見守り続けてきた。歴史の重みを感じずにはいられない。
そして、草をはむ寒立馬。こんなにも間近で見ることができるなんて、感激だ。

<運転40分>
15:40 むつ市田名部・ミルク工房 ボン・サーブ到着/16:10出発


旅も終盤だ。空港へ向かう道すがら、ミルク工房 ボン・サーブに寄り、しぼりたての牛乳とソフトクリームを購入した。お店の周りではポニーやヤギののんびりした様子も見られ、思わず頬が緩む。
このあたりは明治初期に会津藩の人々によって斗南藩として開拓され、戦後は北海道の人々によって開拓が進められたそうだ。厳しい自然との闘いの歴史でもあったという。

18:00を回るころには三沢空港に到着。19:25の羽田行きのJALに搭乗した。心地よい疲れを感じながら、旅を振り返る。未知の魅力に満ちた土地だった。海を見た、森に包まれた、風を浴びた、絶景を見た。おいしいものを食べ、良いリフレッシュができた。満足しつつも、下北という土地はまだまだ奥が深そうだ。必ずまた訪れたい。

\ この記事の著者 /

佐藤 史隆

季刊あおもりのき発行人

1972年青森市生まれ。青森高校、東海大学文学部卒業。帰郷後、地域誌「あおもり草子」編集部へ。2019年冬「ものの芽舎」創業。2020年12月あおもり草子後継誌として「季刊あおもりのき」を創刊。NPO法人三内丸山縄文発信の会(遠藤勝裕理事長)の事務局としても活動。2022年4月には、青森県の馬に関する歴史・民俗・産業などのあらゆる事象を研究するあおもり馬事文化研究会(笹谷玄会長)を立ち上げた。ちなみに佐藤家のお墓はむつ市川内にあり、毎年家族で墓参りをしている。

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