心にしみる
下風呂温泉の旅
はるばると、
本州北の果て。
また、来てしまった。
はるばると、本州北の果ての温泉へ。
部屋の窓を開けると潮の香りと波の音。
漁船と共に帰ってきた海鳥の声がする。
イカ釣り船が並ぶ「下風呂漁港」、
海峡の向こうは北海道、
恵山や函館の町が水平線に浮かんでいる。
曇天の港は、とりわけ旅情を誘う。
「北の果てまで来てしまった」という思いと
「海の彼方へ渡ってみたい」という思いが交錯して、
時が経つのを忘れていた。
しみ渡る
下風呂温泉。
下風呂温泉は、とにかく「しみ渡る」。
湯が滲みる。うまい魚が体にしみる。
地酒が染みる。情けが沁みる。
日々の暮らしに心が乾いたら、
がんばりすぎてへとへとになったら、
ふと、誰かに優しくしてもらいたくなったら、
どうか下風呂温泉に浸り、
骨の髄まで温もりをしみ渡らせてください。
宿ならではの
湯を愉しむ。
なぜ、海峡を望むこの場所に、
不思議な魅力を持つ温泉が湧いているのだろう。
下風呂温泉には、大湯、新湯、浜湯と
3つの異なる系統があり、
宿によって引いている源泉が違う。
湯の整え方もそれぞれのこだわりがあり個性豊か。
「くうぅう」と温泉に身を委ね、
魅惑の下風呂の旅が始まる。
下風呂温泉「3つの泉質」
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新湯系(新湯1~4号混合泉)
新湯は、さらりとした透明な湯に湯の花が舞う。熱めできりりと肌にしみこむ感覚。
泉質:含硫黄-ナトリウム-塩化物泉
pH:7.4(中性) / 泉温:78.8度 / 成分総計:5.331g/kg -
大湯系(大湯1号、2号、4号)
大湯は最も古い源泉で、乳白色のにごり湯になる。やわらかな肌触りで肌しっとり、体の芯まで温まる。
泉質:含硫黄-ナトリウムー塩化物・硫酸塩泉
pH:2.19(酸性) / 泉温:56.5度 / 成分総計:4.266g/kg -
浜湯系(海辺地1号、2号)
浜湯は、濃厚硫黄+潮の香りの湯。こっくりまろやかな感触でぐんぐん血行促進して発汗。
泉質:含硫黄-ナトリウムー塩化物泉
pH:5.80(中性) / 泉温:- / 成分総計:4.895g/kg
下風呂温泉海峡の湯
室町から続く
文豪ゆかりの湯。
室町時代からこんこんと湧き続ける下風呂温泉は
藩主や文人にも愛された歴史がある。
2020年誕生の「下風呂温泉 海峡の湯」は、
文豪・井上靖氏が小説「海峡」を仕上げた
旧長谷旅館の源泉と大湯、新湯の3湯入り比べができる。
内湯はヒバ造りで大湯と新湯、そして熱湯。
地元住民や漁師さんも通うみんなの湯なので、とにかく熱い。
あっちっちと洗礼を受けたら、
半露天風呂「井上靖ゆかりの湯」へどぼん。
湯上りには2階の井上靖氏ゆかりの客室で
文豪気分を味わい、おなかがすいたら食堂へ。
地魚定食や、高さ10センチほどもあるゲソ天が人気。
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大湯(白濁) / 新湯(透明に近い) / 井上靖 ゆかりの湯
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青森県下北郡風間浦村大字下風呂字下風呂71-1
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4月~10月/7:00~20:30・11月~3月/8:00~20:30(最終受付 20:00)
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毎月第2・4火曜日、1月1日
どの宿も
食事がすごい。
下風呂温泉には9軒の宿がある。
泊まってこそわかる下風呂温泉の魅力は他にもある。
どの宿も食事がすごい。潔いほどの海の幸尽くし。
海峡の港町ならではの旅ごはんで、
おいしすぎる魚介のたんぱく質を徹底的にチャージし、肌と体の
活力の素になってくれるのだから、何とありがたいことか。
春夏は、海藻、イカ、ムラサキウニ、ナメタガレイ、アワビ。
冬は、鮟鱇やミズダコが美味しい。
イカ刺しや、イカのぽっぽ焼き、塩辛で地酒を味わうのもいいし、
鮟鱇鍋は、宿によって味噌系、しょうゆ系、
豆乳味噌などこだわりがある。
笑顔の主人や女将に迎えられ、温かなもてなしが心に沁みる。
湯に浸かり、海峡の港を眺め、
海のごちそうを満喫してぐっすり眠る。
下風呂温泉お宿&温泉MAP
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01新湯系
つぼた旅館
ご主人自慢の、下風呂で一番熱い湯が特徴的です。さっと入る短時間浴をくり返せば疲れが吹き飛びます。
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新湯系
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青森県下北郡風間浦村下風呂字下風呂家の尻11
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チェックイン15:00 / チェックアウト 10:00
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不定休
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02新湯系
佐々木旅館
青森ヒバ造りの内湯があります。基本1日一組の宿で、ひとり占めサイズの湯船が嬉しいです。
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新湯系
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青森県下北郡風間浦村下風呂字下風呂81-6
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チェックイン15:00 / チェックアウト 10:00
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不定休
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03海峡の湯へ
民宿 菅原
女将こだわりの、風間浦村の新鮮で旬な食材を使ったおもてなし料理が絶品です。和情緒あふれる、静かなお宿です。
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海峡の湯へ入りに行く
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青森県下北郡風間浦村下風呂字下風呂81-4
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チェックイン16:00 / チェックアウト 10:00
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不定休
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04大湯系
まるほん旅館
漁船を思わせる、つるんとした深さのある青い湯船が特徴的です。やや熱めですが、ふんわりやわらかな感触が心地よくじんわり染み入ります。
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大湯系 酸性強め
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青森県下北郡風間浦村下風呂字下風呂113
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チェックイン15:00 / チェックアウト 10:00
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不定休
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05新湯系
さが旅館
熱めできりりと透明な新湯の特徴を味わえる湯です。くぅっと温まって、浴後はすっきりします。
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新湯系
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青森県下北郡風間浦村下風呂字下風呂24
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チェックイン15:00 / チェックアウト 10:00
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12月末~元旦
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06浜湯系
つる屋 さつき荘
海辺地2号泉で、かつては墨色の湯でしたが、今は白濁の湯で細かな墨色の湯の花が舞います。あつ湯でさらりとした感触、そっと浸かると馴染んで心地よくなってきます。
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浜湯系 海辺地2号
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青森県下北郡風間浦村下風呂字下風呂33
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チェックイン15:00 / チェックアウト 10:00
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不定休
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07大湯系
おおぎや旅館
湯の花たっぷりの熟成系で、ふわふわのやわらかさがこだわりです。硫黄が強いので、お酒を飲んだ後の入浴は控えるのがおすすめです。
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大湯系 酸性強め
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青森県下北郡風間浦村下風呂字下風呂65
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チェックイン16:00 / チェックアウト 10:00
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8月13日、12月29日~1月3日
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08浜湯系
ホテル ニュー下風呂
硫黄と塩湯の両方を感じる不思議な感覚がある湯です。こくまろの湯は無限の宇宙のように心地よいですが、しっかり温まって爆汗できます。
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浜湯系 海辺地1号
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青森県下北郡風間浦村下風呂字下風呂67-2
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チェックイン15:00 / チェックアウト 10:00
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年中無休
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09浜湯系
下風呂観光ホテル 三浦屋
半露天風呂があり、潮風を感じながら温泉が楽しめます。夏は涼みながら、冬は雪が舞う様子を見ながら入ることが出来、風情があります。
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浜湯系 海辺地1号
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青森県下北郡風間浦村下風呂字下風呂70
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チェックイン15:00 / チェックアウト 10:00
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不定休
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海を眺め
ぶらり散策。
下風呂温泉を歩いて巡ると、暮らしの気配や、
思いがけない風景が待っている。
坂をひとつ登ると、鉄道アーチ橋が現れる。
ここは幻の大間鉄道「しもふろ駅」。
戦前に建設が始まり、工事が中断したまま残された
幻の大間鉄道の一部がメモリアルロードになっている。
駅のベンチは最高のくつろぎスポット。
温泉街と海峡を見渡す絶景の足湯もある。
心にしみる下風呂温泉。
魅惑の旅は、まだまだ続く。
「下風呂の本」~心にしみる下風呂温泉の旅~
青森県下北半島の下風呂温泉郷をご紹介している旅行ガイドブックです。下風呂温泉の湯にスポットをあて、3つある泉質の特徴や周辺の温泉施設、下風呂の過ごし方などをご紹介しています。下風呂温泉へのご旅行やご宿泊がさらに楽しくなる一冊です。
- 企画/編集
- 本田屋本店 有限会社
- 取材/執筆
- 石井 宏子(旅行作家/温泉ビューティ研究家)
- 撮影
- 杉本 圭
- デザイン/イラスト
- キクチナツキ
- 協力
- 風間浦村
- 配布場所
- 下風呂温泉郷の9つの宿で、数量限定で無料配布中。
※数に限りが御座います。予めご了承ください。