下北人SHIMOKITA-BITO

「ここは下北半島の玄関口」顔としての責任感

下北半島の大動脈として、野辺地町から大間町までをつなぐ国道279号線(はまなすライン)。この道沿いに、陸奥湾や釜臥山を一望できるドライブイン「トラベルプラザ・サンシャイン」がある。
下北半島の入り口にあたる横浜町で、観光ドライブインとして営業を始めて50年。父から受け継いだドライブインを通じて、下北半島を盛り上げる立役者の一人、(有)すぎやまの代表、杉山徹さん。

サンシャインの売店では、横浜町だけでなく、下北半島各地のお土産がそろう。陸奥湾の味を楽しめる食堂、コンビニも併設しており、下北半島に向かう人々が多く立ち寄る。
横浜町は、行政の区分けでは上北郡に属するが、生活や文化では下北とのつながりも深い。特に観光という仕事においては、下北地域の事業者とも連携しながら、下北の一員として、地域の発展に力を尽くしている。
「ここは、絶対下北だ!」
杉山さんに下北愛を語らせると熱い。

下北半島の「人生の通り道」

サンシャインの食堂に、ところ狭しとスナップ写真が飾られた部屋がある。よく見ると、写真はバスの乗務員、つまりガイドや運転手だ。カウンターの中には、バス会社特製のチョロQや、運転手の制帽、名札まである。
「ここに寄ってくれた乗務員さんたちが記念に置いて行ってくれるんだよ。写真はアルバムにしまっているものもあるから、何枚あるのかなんて数えきれないなあ」
下北半島を訪れるバスは、遠くは四国からもやってくる。乗務員は何度もここを訪れ、なじみになって、写真や記念品を置いていく。何十年も続いているから、訪れる乗務員も世代交代した。

数年前、母親がバスガイドをしていたという若い運転手が立ち寄った。彼は母親も立ち寄っているかもしれないと、杉山さんにバス会社の名前を告げた。彼の母親はやっぱりここに来ていた。彼は写真の中の母親を見つめながら、目に涙を浮かべた。
「人と人とのつながりが財産だ。どんどん年を取って若い人に代わるのを見るのは悲しいこともあるけどな」
と杉山さんは笑う。
もちろん乗務員だけでなく、観光客、ビジネスマン、いまは減ってしまったが、かつては恐山に向かうイタコさんも立ち寄った。多くの人が立ち寄る場所であり、ここはそれぞれの人生の通り道である。

何だこれは!ユニークなお土産のオンパレード

「菜の花咲いだー(サイダー)」「恋マヨ」「ホタテ愛すクリーム」「なまこエクレア」
これは実は全部、杉山さんが考案したお土産の名称だ。
「新しいものを作り続けるのが屋の使命だと思っているから。お土産なんて、売り出して3年続けばいいほう。1年で飽きられるものも多い。新しいものをどんどん提供していかないと」

と語る杉山さんが作った土産品は、正確な数は数えていないが、少なくとも80種類以上になる。
横浜町の三大名物といえば、菜の花、ナマコ、ホタテ。
杉山さんの頭の片隅は常にこの3つの名物がある。そして、ちょっとお酒を飲むと、アイデアがむくむくと沸き上がる。そのアイデアを、まずは何でも試して、うまくいきそうなものをどんどん商品化していく。仕上げに商品名にダジャレをきかせて、できあがり。いま販売されている菜の花関連商品だけでも、オイルはもちろん、サイダー、せんべい、かりんとう、焼酎、アイスクリーム等々あり、横浜名物として十分なラインナップだ。
お土産品について話していると、杉山さんは棚の奥をごそごそを探して、「実はまだ内緒の新商品なんだけどな・・・」 と言って、新商品の試作を見せてくれる。 もちろんまだここには書けない!

「菜の花のまち 横浜町」

「菜の花のまち 横浜町へようこそ!菜の花商品、お土産にいかがですか?」 サンシャインの売店にお客様が入ると、録音されたこのアナウンスが必ず流れる。声の主は杉山さんだ。
横浜町は、日本で有数の菜の花の産地。平成元年に作付面積が日本一になったのをきっかけに、菜の花のまちづくりが始まった。
お土産も菜の花を全面に押し出したものが多い。一番のロングセラー商品は「菜の花せんべい」だ。せんべいを菜種油で揚げたもので、トッピングもこだわって、ゴマではなく菜種を使っている。

菜種油もおすすめだ。町内で採れた菜種を使って、サンシャイン内の工房で搾っている。横浜町で栽培されている菜の花は「キザキノナタネ」という品種。有害なエルシン酸を含まない。サンシャインの売店でいつでも購入することができ、花が咲いていなくても菜の花の恵みを感じることができる。

アイデアを活かし、地域をつなぐ

杉山さんがお土産の開発を始めたきっかけは、1991年に開催された第1回菜の花フェスティバルだ。菜の花を使ったまちづくりに、お土産屋として協力できることを考え、新しいお土産を作ることだと思い立った。お土産があれば、菜の花が咲いていない時期にも横浜町をPRすることができる。それ以来、毎年5月の「菜の花フェスティバル」、12月の「横浜なまこフェア」には必ず新しいものを発売する。

横浜町の特産品を使って、加工は町外の事業者に委託することが多い。いろいろな人と協力して、良い商品づくりを目指す。珍商品「なまこエクレア」は隣の野辺地町にあるお菓子屋さんに頼んだが、こんな苦労話も。
「なまこのトゲトゲがなかなか出ないんだよな。何度も何度も、チョコレートをもっともっとなまこみたいに、トゲトゲにしてくれってお願いして、ようやく安定してできるようになった」  横浜町のお土産に限らず、下北のお土産をプロデュースすることもある。風間浦村で発売された、津軽海峡の塩を使った「海峡塩サイダー」は、杉山さんが今までの商品開発の経験を活かしてアドバイスしたものだ。お土産品を通じて、町内にとどまらず、地域をつないでいる。

下北が一丸となって、魅力ある地域づくりを

「危機感だらけだよ。だからがんばらなきゃと」
現在、下北半島の道路網を充実させるべく、バイパス「下北縦貫道」の整備が進んでいる。完成までにはまだ10年以上かかると見込まれているが、完成すると、むつ市方面へのアクセスがよくなる半面、横浜町が素通りされてしまうかもしれない。横浜町に立ち寄る人が減らないように、いや、むしろ増えるように、魅力を増やしていかなければならないというのが杉山さんの思いだ。

そして、同じ下北で観光に取り組む人たちが一丸となって連携して取り組むことが重要だと説く。
「いろいろなことをやっているけど、とにかく、大好きな下北、大好きな横浜町だから、っていうのが一番強い」
杉山さんはこれからも、その手で、たくさんのお客様をおもてなしし、地域の人と人をつないでいく。

Text : 園山和徳  Photograph :ササキデザイン 佐々木信宏

トラベルプラザ・サンシャイン


所在地
〒039-4114 青森県上北郡横浜町大豆田127
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電話番号
0175-78-2080
URL
http://www.tpsun.jp/