下北人SHIMOKITA-BITO

ヒバの無限のパワーに魅せられて

青森ヒバの力は、すごい。
ヒバ油に含まれる成分には抗菌効果があり、カビや雑菌を寄せ付けない。消臭効果もある。ヒバの香りは爽快感があって心地よく、心を安らかにしてくれる。また、虫にも強く、シロアリが寄ってこないので、ヒバで建てられた家はずっと安心して使い続けることができる。
こういったヒバの魅力を語らせたら随一の熱い男が、村口要太郎さん。
村口さんは、青森ヒバを専門に扱う、(有)村口産業・わいどの木を経営している。

「ヒバに命を懸けてます。ヒバじゃなかったら、この仕事してません」という村口さんのヒバへの情熱は、下北で知らない人がいない。
村口産業では、ヒバを製材して、柱や板などとして販売するとともに、ヒバの木工品を製造販売している。ヒバを余すところなく使っているのが大きな特徴だ。ヒバを製材する時に出るおがくずまで有効に利用している。おがくずを圧縮して固めた芳香除湿剤「ひば爆弾」は、60万個以上を売り上げる大ヒット商品だ。他にも、定番からあっと驚く品まで、さまざまなヒバ商品が並んでいる。

素材にこだわり、確実な品づくり

村口さんは、ヒバの丸太の断面を見せながら、こう語る。
「うちのこだわりは、ここ、この赤い部分、赤身だけを使う。周りの部分は白いでしょう。白い部分は、ヒバでもカビが付く。赤身には一切つかない。チップでも赤身だけを使う。それだけこだわってます。」

木の、中心に近い部分を赤身、周辺の部分を白太(しらた)という。木の成長とともに、中心に近い部分から細胞が古くなって、含まれる化学物質が変化し、色も白色から赤色になる。ヒバの有効成分が多く含まれるのは、この赤身の部分だ。腐りにくく、虫の害を受けにくい。わいどの木では、ヒバの抗菌、消臭、防虫効果を確実に提供するため、製材品はもちろん、ヒバチップもこの赤身の部分を使っている。

では、白太の部分は捨ててしまうのかというと、そうではない。表面の美しさを活かして、インテリアとして加工する。
取材の時には、正月飾りとして加工された白太の商品が、工場で準備されているところだった。

動物も人も元気にするヒバの力

村口産業は1944年に操業を開始した。村口さんが跡継ぎとして仕事に就いた時、製材業と養豚業を営んでおり、村口さんは養豚を担当した。
養豚では、母豚の出産の時、地面にワラを敷くのが一般的だ。村口産業では、敷ワラの代わりとして、ヒバのおかくずを使っていた。すると、時折、腹を空かせた豚たちがおがくずを食べる。それが良かったのか、豚は健康になり、薬がいらなくなった。必要最低限の予防接種などはもちろん行ったが、ヒバで豚が元気になるというのは、養豚業界の常識から外れたことだった。専門家や保健所も驚いた。

その後、父が他界し、養豚から製材に仕事場を移すこととなった。養豚で感じたヒバの良さを人間も活用したいと考え、会社をヒバ専門店として展開するようになった。
ヒバのパワーは語り尽くせない。村口さんは、参考までにと、お客さんから届いたメールの一部を見せてくれた。「わいどの木でヒバと出会い、抗菌作用に着目して足にヒバの油を使ったら水虫が治りました」とのメール。村口さんにも新しい発見で、改めてヒバの力を感じたという。

常識にとらわれず、ヒバを活かして挑戦を

製材所だが、今は市場には出荷していない。インターネットなどでの個人への販売がほとんどだ。昔の製材所では考えられなかったスタイルである。新商品や新サービスも、次から次へと打ち出す。
現在のイチオシは、ヒバのチップに全身埋もれることができるヒバベッド。東京のど真ん中でこのヒバベッドを使ったイベントを行って、ヒバをPRすることも計画中だ。
「田舎は素材がある。だからいくらでも売れていくぞ。」と村口さん。

製材所なのに、宿泊施設まである。木の家をお客さんに見せたい、と思い立ち、作られたのが、簡易宿泊施設「わいどの家」だ。建物自体が青森ヒバで作られているのはもちろんのこと、室内の家具や小物まで、ふんだんに青森ヒバが使われている。さらに、見えないところまでヒバを使っている。村口さんに促されて、床のパネルを開くと、その中にはびっしりと敷き詰められたヒバのチップが。壁の中にも断熱材としてヒバのチップを使っている。まさに、青森ヒバの魅力を満喫できる、1日1組限定の宿泊施設である。

「ヒバは、腐らない。カビない。それは、子どもが丈夫になるというのとつながります。ここに来た親はね、子どもがすーっと寝ていくって、不思議がるんだよ。」と村口さん。

村口さんは、ただヒバを売るだけではない。青森ヒバの伝道師だ。毎年夏には北海道へ出かけ、ヒバを植えながら北海道の人とふれあう旅をしている。「北海道にヒバを植える、要太郎の旅」、2018年は下北から函館へ渡り、美唄や北見を回って、40本のヒバを植えるとともに、ヒバの魅力を伝えた。

「ヒバが大きくなるころには、100年200年とかかるんだから、自分も、相手も、生きていない。でも、知ってもらって価値がわかればそれでいいんだ。」
あらゆる時もヒバに情熱を注ぎ、その手でヒバの価値を伝え続ける村口さん。その情熱が、関わる人や地域の元気を生み出している。

Text : 園山和徳  Photograph :ササキデザイン 佐々木信宏

村口産業・わいどの木


所在地
〒039-4502 青森県下北郡 風間浦村易国間大川目6-7
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電話番号
0175-35-2147
営業時間
9:00~12:00 13:00~17:00
URL
https://ydonoki.jp/