本州最北端「まさかり」の形をした下北半島。独自の歴史と特徴的な自然、それ故生まれた伝統文化。
3つの海と海流が育む豊かな食、四季折々の風景を紹介します。
本州最北端「まさかり」の形をした下北半島。
日本列島を形成する4つの地層が集結する特別な半島。
太平洋・陸奥湾・津軽海峡、豊かな海に囲まれ四季折々の自然の恵みを楽しむことができる。
海と共に生きてきた人の暮らしや、根付く文化に魅了され、時間を忘れてしまう。
少し不便な土地だからこそ、自分の思うままに自由に過ごせる場所。
下北半島は青森県の本州最北端に位置し、四方を海に囲まれた「まさかり」の形をした半島です。
半島全体が国定公園に指定されていて、北限のサルなど貴重な動植物が生きる土地であり自然と人の暮らしが強く結びついています。
古くから漁業が盛んで、人口の約20%が漁業従事者の町村もあります。
海運により発展した半島であり、江戸時代には北前船によって上方文化が多く伝えられ各地域に色濃く引き継がれてきました。
下北半島は太平洋・陸奥湾・津軽海峡の性質が異なる三海に囲まれています。
また日本列島を構成する主要な4つの地質が集結し、ここにしかない自然美を創り上げました。
海と大地そして風、自然の力によって悠久の時間をかけ生み出された絶景が下北半島には数多く存在しています。
大昔のサンゴ礁が固まった石灰岩が津軽海峡と太平洋を隔てる尻屋崎、奇岩の景勝地として人々を惹きつける仏ヶ浦、信仰の対象地である恐山。
このように、地域によって異なる地形や気候、海流の特徴が下北半島の名所に表れています。
下北半島は古くから海運によって栄えた地域であり、江戸期に蝦夷地(北海道)から上方までを結んだ北前船は本州最北の地・下北へ、豊かさとともに今日まで息づく様々な文化をもたらしました。
当時の大阪は商都、京は公家文化の中心でもあり、対馬暖流に乗った北前船は様々な特産品や文化風習を下北へと運んできました。
むつ市の田名部神社例大祭などの、下北各地に伝わる山車祭りは京都祇園の流れを汲み、豪華絢爛で勇壮な山車や囃子が特徴で上方文化の影響が色濃く残っています。地元を離れ暮らす人も祭りの時期だけは帰郷するというほど地域に愛され受け継がれています。
平成元年、国指定重要無形民俗文化財に指定された下北の能舞は、室町時代に修験者によって伝えられたとされています。山伏神楽の流れをくむ民俗芸能は、東通村を中心にむつ市や横浜町でも行われています。現代でも神社の例大祭や正月行事などで古式ゆかしく行われるなど、地域の人々は子々孫々へと歴史ある文化を大切に伝えています。
県指定無形民俗文化財にも指定された全国的にも珍しい漁村歌舞伎。明治時代に上方の歌舞伎役者・中村菊五郎とその妻が伝えたといわれています。娯楽や文化に乏しく特に冬は楽しみが少なかった地域の人々に喜ばれ、漁師によって120年以上も守り伝えられてきました。
日本三大霊場としても知られる恐山。この世のものとは思えない景観で全国各地から人々が訪れる信仰の山であり、下北の住民にとっても「死ねば恐山(おやま)さ行く」という地域信仰の対象地となっています。立ち込める硫黄臭と荒涼とした岩肌、賽の河原、極楽浜など、地獄や極楽に見立てた景色が幻想の世界へと誘います。
下北半島を囲む海はそれぞれ性質が異なるため、太平洋は荒い海、津軽海峡は速い海、陸奥湾は穏やかな海と表現されています。
山からミネラルたっぷりの水が注ぎ、魚や海藻などの栄養となるプランクトンが豊富な海。
海の様子は日々変わるため、下北半島では四季折々の海の恵みを味わうことが出来ます。
1億5千万年前のジュラ紀地層からの湧水を使った地酒造りや段丘地形を生かした牧畜も行われており、下北地域外には滅多に出回ることのない特産品があります。
下北半島の気候は四季のうつろいがはっきりとしており、短い夏は比較的湿度が低いことから過ごしやすく、冬は積雪量も多く、辺り一面白銀の世界に包まれます。
多彩な花見が楽しめる下北の春。海に彩りを添える桜、日本屈指の広さを誇る菜の花畑とアクセントになる風車など絵になる景色で溢れる。
歴史ある例大祭に花火大会、3つの海で繰り広げる船旅、ホタルやイルカの鑑賞、雲丹やイカに舌鼓など、下北の短い夏はお楽しみが盛りだくさん。
川や渓流沿いを赤や黄に染める紅葉の絶景が点在する下北半島。陸奥湾を望むぶどう畑ではワイン用のぶどうが収穫され、東通そばの旬の味や豊作を願う伝統の祭りも秋ならでは。
白銀の世界に生きる寒立馬や白鳥、小正月には人々の願いを込めた伝統芸能もちつき踊りが行われるなど雪国の美や文化が胸を打つ。鮟鱇、マダラ、ナマコなど冬の味覚も数々。
海と生きる「まさかり」の大地。
下北ジオパークは平成28年9月9日に日本ジオパークに認定されました。地形や地質だけでなく、地域の人々の暮らしや生態系、歴史文化や食など、ここにしかない魅力を様々な観点から知ることができます。
ジオパークとは、地球・大地「ジオ」と公園「パーク」を組み合わせた言葉です。大地の公園を意味し「人々の暮らしと、自然や大地とのつながり」を学び、楽しめる場所です。地域の名所や名物が生まれた背景には、その地域ならではの地形や気候、海流などが関係します。これを実際に観察したり、触ったりすることで、大地・自然・人々の営みのつながりを体感することができます。