2022-3-18

下北半島の隠れ名所!?川内川渓流を歩く

小池 拓矢(むつ市地域おこし協力隊)むつ市在住プロフィール

私の住むむつ市川内町は、むつ市の中心部から車で40分ほど、自衛隊の基地がある大湊地区の先にある。「恐山」や「仏ヶ浦」のような、The観光スポットは無いかもしれないが、下北半島のなかでも、目一杯自然を満喫できる場所の1つだ。

今回紹介するのは、川内川渓流。川内町中心部から10分ほど車を走らせ、川内町の工芸品である「宇賀焼」を作るむつ市陶芸センターの前から遊歩道の散策をスタートしよう。

渓流沿いの森の中に入っていくと、様々な植物が顔を出す。スギに囲まれた林の中に、「山菜の女王」と呼ばれるコシアブラや、枝からいい香りが漂うオオバクロモジなど、図鑑片手に散策するのもおもしろい。

秋に子どもたちの案内をした際は、私の話を聞くのもほどほどに、ミズナラのどんぐりやヤマハンノキの実などを拾うのに夢中になっていた。大人は紅葉、子どもは木の実と、秋は渓流沿いを歩くのに最高の季節である。

ヤマウルシには触らないように注意!
ヤマハンノキ

さて、遊歩道を上流に向かって進んでいくと吊り橋が見えてくる。川内川渓流の遊歩道には大きな橋が3つ架かっており、それぞれ「あじさい橋」、「セキレイ橋」、「あすなろ橋」という名前が付いている。橋の名前はそれぞれ、旧川内町の町の花、鳥(ハクセキレイ)、木(ヒノキアスナロ=ヒバ)が由来であり、3つの橋はそれぞれ種類も異なっている。

あじさい橋
あじさい橋

あじさい橋とセキレイ橋の間には下戸ヶ淵という小さな橋が架かった場所があり、この橋から川底をのぞき込むと、おう穴(ポットホール)と呼ばれる穴をたくさん見ることができる。これは溝にはまった小石が、長い間川の流れで回転することで、岩石面を削ってできた穴である。津軽海峡に面したちぢり浜や仏ヶ浦などでもみることができる地形だが、ここは特にその数が多く、おう穴群と呼ばれている。

下戸ヶ淵のおう穴群

さらに先に進んでいくと、川内川渓流一番の見どころである大滝を、セキレイ橋の上から見ることができる。ガイドブックに載っている大滝の写真はこの橋の上から撮影したものがほとんどだが、遊歩道をさらに進み、気を付けて土手を下りれば、川岸まで近づくことができる。ここでは溶岩が冷え固まってできた「柱状節理」の構造をもつ岩がよく見える。そして何よりも川のせせらぎの音を聴きながら、ゆったりした時間を過ごすことができるので、私のお気に入りの場所である。

大滝の上流から見たセキレイ橋
柱状節理

川内町は大正時代に鉱山の町として栄えた一方、鉱山周辺の植物には深刻な被害が出たといわれており、ここまでのコースでは、薬研渓流で見られるようなヒバやブナの大木はほとんど見ることができない。一方、川内町では海に栄養をもたらす森を守るために漁師による植林が毎年行われており、川内川渓流を歩くことによって、鉱山と森、森の再生、海と森の関係など、人と自然とのつながりに想いを馳せることができるのだ。

陶芸センターから大滝までは徒歩で往復2時間ほど。渓流の上流には「ふれあい温泉川内」、下流には「スパウッド観光ホテル」の温泉があるので、身も心もリフレッシュして、ゆっくり家路につくとしよう。

\ この記事の著者 /

小池 拓矢(こいけ・たくや)

むつ市地域おこし協力隊

むつ市在住

神奈川県出身。
2021年より、川内町にある「むつ市海と森ふれあい体験館」のスタッフとして、地域の子どもたちや観光客に、陸奥湾や森の魅力を伝えている。
以前は下北ジオパークの推進員も務めており、その経験を生かして観光ガイド「ガイディングアローズ」の活動も行っている。

■むつ市海と森ふれあい体験館
・ホームページhttps://shell-forest.info/
・Facebookhttps://www.facebook.com/
mutsu.taikenkan

■ガイディングアローズ
・ホームページhttps://www.guidingarrows.net/
・Facebookhttps://www.facebook.com/
guidingarrows.Shimokita

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